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【生肉】257-263

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IP属地:上海1楼2021-12-31 22:04回复
    257
    転生王女の疲弊。
    温室に隣接した休憩スペースにて。
     私は机に頬をくっつけて、ぐったりとしていた。
     王女にあるまじき行儀の悪さだけど、今は見逃してほしい。
     疲れているんだ。物凄く、めちゃくちゃ、とっても疲れているんだよ。
     ガラス越しに見える草木の緑に、目と心を癒されながら溜息を長く吐き出した。
     女公爵への道は、私が考えるよりも遥かに険しかった。
     まず素養がない。王女として一通りの教育は受けたけれど、まるきり分野が違う。他国の王家か国内の高位貴族へ嫁ぐ予定だった私と、領地経営を任される公爵とでは、学ぶ科目が違うのは仕方のない事だ。
     分かっていたつもりだったけれど、ちんぷんかんぷんで辛い。特に数学とは前世から相性が悪かったので、苦手意識がある。
     餅は餅屋、会計士を雇うのでは駄目ですかと泣き言を言いたかったけれど、トップが基本の仕組みさえ理解していないのはマズいと。正論過ぎて泣ける。
     あと、予想以上に詰め込んできている。
     丸暗記に次ぐ丸暗記で、そろそろ頭がパンクしそうだ。元々スペックの高くない私の脳みそが悲鳴を上げている。眠っている間に耳から知識が零れ落ちそうで怖い。
     今はまだ序の口だというのに、既に疲弊していて大丈夫なんだろうか、私。
     不安を抱えながらも、逃げられないのは理解している。
     せめてもの抵抗のように、短い休憩時間に温室まで逃げてきた。
     先生とお茶……という名の問答形式の補講を受ける気力はない。私の為に時間を割いてくれているのに申し訳ないと思う。でも、すみません、無理。
     少しの間でいいから、だらしなくぐったりさせて……。
     護衛として付き添うクラウスは私の疲れ具合を心配してくれているのか、部屋の外で待機してくれている。
     少しでも一人の時間を確保してくれようとする気遣いが、凄く有難い。
    「あー……」
     息と共に、気の抜けた声が洩れる。
     何処かに視点を定める元気もなく、なんとなく目についた薬草の葉についた雫が、日差しを弾いてキラキラと輝くのをぼんやりと眺める。
     どれ位そうしていたのか。
     キィと扉が開く控え目な音がした。
     時間だと呼びにきたクラウスだと思い、のろのろと顔を上げる。
    「そろそろ……」
     時間よね、と続けようとした言葉が途切れる。
     目の前にいたのはクラウスではなかった。
    「もう少し、時間はあるそうですよ」
     困り顔で立っていたのは、久しぶりに会った友達。
    「テオ!」
    「姫様、酷い顔ですよ。もう少し休んでいってください」
     からかうような言葉とは裏腹に、本気で心配している声と表情。
     気配り上手で心配症の友人、テオは、そう言って苦笑した。
     傍まで来ると、立ち上がりかけていた私を椅子に座らせる。
     テオは昔から背が高かったけれど、更に差が開いた気がした。見上げる彼の体躯は大きく、逞しい。顔付きも大人びて、浮かべる笑みにも、落ち着いた内面が滲み出たような深みがある。すっかり大人の男性だ。
    「ルッツは? 一緒ではないの?」
    「オレは師匠に用事があったので、今日は別行動をしていました。そのうち来ると思いますから、休んで待っていてやってください」
     久しぶりにルッツにも会いたかったので、その言葉に頷いた。
    「勉強、大変そうですね」
    「覚える事がたくさんあるの。遣り甲斐はあるけれど、記憶力があまり良くないから、覚えるのが大変」
    「頑張り屋なのは知っていますが、あんまり根を詰めすぎないで」
     休憩時間に逃げてきた身としては、その評価を受け取るのは心苦しい。視線を合わせず、小さな声で白状しても、テオの眼差しは優しいまま。
    「そのくらいでいいんです。いや、姫様は息抜きが下手だから、もうちょっと自分に甘くても許されますよ」
     テオは椅子を引き、向かいの席に腰を下ろす。
     『自分に甘く』と言われても、加減が難しい。
     元々、勤勉ではない自身の性質は理解している。手を抜くとそれが恒常化してしまいそうな気もするし、そのまま際限なく堕落しそうな恐ろしさがあった。
    「もっとも、それが出来ないのが姫様なんでしょうけど」
     意外と不器用ですよね、と付け加えられてぐうの音も出ない。
     馬鹿にする意図は欠片もなく、ただ気遣いと親愛だけが込められた言葉に、気恥ずかしいようなむず痒さを覚えた。
    「誰かが傍で見ていないと、倒れるまで働きそう……と思いましたが、止めて下さる方が出来ましたね」
     テオの言葉が、一度途切れる。
     目を伏せ、言葉を躊躇うような沈黙が数秒続く。何かを呑み込んだように見えたのは、気のせいだろうか。
     顔を上げた彼は、静かな表情で言った。
    「ご婚約、おめでとうございます」
    「……ありがとう」
     深みのある紅玉の瞳に見入ってしまい、返す言葉が少しだけ遅れた。
     お祝いの言葉と笑顔に嘘はないと思う。でもきっと、それが全てでもない。何か胸に閊えているものがありそうなテオの表情が気がかりだった。
     ただ、それを無理やり暴く事はしたくない。
     でも見過ごしたくもない。
     相反する気持ちで、方向性も定まらないまま、声を掛けようとした。
    「テオ……」
    「実は姫様に、相談したい事があったんです」
     私の小さな呼びかけを遮るように、テオは笑顔で唐突な話を切り出す。
     驚きに瞬きを繰り返してから、「相談?」とテオの言葉を繰り返した。
    「はい。相談に乗ってくれます?」
     私は、戸惑いながらも了承する。
    「姫様が立案した医療施設の件なんですが、学び舎や研究施設も併設されると聞きました」
     予想していなかった話題に面食らいつつも、頷く。
    「せっかく優秀な薬師と医者を集めるのだから、医療施設だけじゃ勿体ないわ。どうせなら技術の研磨と新薬の開発、それから、新しい医療知識を詰め込んだ未来のお医者さんも育てられたらお得じゃない?」
     お得なんて言葉で済ませられないレベルの事業になりそうだけど、と内心で自主ツッコミを入れる。
    「とはいえ、たぶん想像以上に難航すると思う。育った環境や学んだ知識、価値観すらも違う人達が一堂に会する訳だから、当然ぶつかるでしょう」
     正直、問題は山積みだとため息交じりに本音を吐き出す。
     まずは様子見で、施設ごとに別個で稼働させるのが良いのかもしれないけれど、その間に派閥という名の溝が出来そうで怖いんだよなぁ。
     同じ医者同士でも、外科と内科の仲が悪いなんて話もよく聞く。それが医者と研究者と教師という別の職種の人達が、ちゃんとお互いを尊重し合って連携出来るのか。悩みは尽きない。
     でも動かさなきゃ、何が問題なのかも分からないままだ。
    「それでも、始める価値があると私は思っている」
     そして問題を解決して、滞りなく動くように手を尽くすのが私の仕事。
     一生かかっても終わらないかもしれないけど、そうしたら子供か孫に託そう。
     私が言い切ると、テオは目を細める。眩しいものを見るような眼差しを向けられ、少し落ち着かない。
     暫く口を噤んでいたテオは、テーブルの上で組んだ自分の手の辺りに視線を落とす。
     酷く真剣な顔で考え込んでいた彼は、やがて顔を上げる。
    「そこで、オレがお手伝い出来る事はありますか?」
    「……え?」
     思いも寄らない言葉を聞いて、呆気にとられた声が洩れた。


    IP属地:上海2楼2021-12-31 22:04
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      258
      炎魔導師の決意。
      ※火属性の魔導師、テオ・アイレンベルク視点となります。
       オレの人生は、たぶん姫様に出会って始まった。
       それまでだって、生命活動としての意味なら生きていた。朝起きて飯を食って、働いてから夜は眠る。その繰り返し。
       そこにオレの意志は存在しない。死にたくないから惰性で生きていたってだけ。
       その中でルッツとの出会いだけは印象深かったが、姫様と会う前のアイツも死んでいたようなものだったから。
       オレとルッツは姫様と会えて、ようやく本当の意味で生き始めたんだと思う。
       姫様はただ可愛らしいだけの女の子じゃなかった。
       年齢にそぐわない聡明さで、王女である自分が何をするべきか、何が出来るのかを考えて行動しているようだった。
       そんなお手本が傍にいたからか、オレも自然と自分の将来について考えるようになった。
       国家に所属する魔導師の見習いとして、目指す地位は決まっているようにも見える。
       ただ『見習い』が取れたら、その先にどうするべきなのかが分からない。
       師匠のように魔術を研究し、後世へと残すというのも道の一つ。
       後進の育成も仕事に入るのだろうけど、魔力持ちが生まれる確率は年々減っている。現にオレ達よりも下の代では確認されていない。今後も出てくる可能性は低い。
       ならオレは、別の道を探したい。
       火属性の魔力持ちであるオレには難しいというのは理解している。
       地や水とは違って攻撃特化の属性だ。有事の際の戦力として以外の道は、咄嗟には思いつかない。
       でも、姫様はオレを竈扱いしたから。
       人を殺す道具ではなく、美味しいもので人を幸せにする道を教えてくれたから。
       オレは出来るなら、姫様の下で働きたい。人の役に立つ道を選びたいんだ。
      「……テオ」
       驚いて固まっていた姫様は、少し間を空けてからオレを呼ぶ。
       真っ直ぐに見つめてくる蒼天の瞳は、酷く真剣な色を宿していた。
      「正直に言うわ」
       ごくりとオレの喉が鳴る。
       何度も繰り返し、この場面を想像した。
       『申し訳ないけれど無理』とハッキリ断られるのと、『魔導師として上を目指した方がいい』と遠回しに断られるのと。どちらだろうかと考えて、怖気づく。
       受け入れてもらえるという前向きな予想が、どうやっても出来ない。
       それでも諦めきれずに、こうして相談してしまった。
      「はい。無理ならはっきり断っていただけた方が、オレとしても有難いです」
       未練がましいオレのせいで嫌な役を押し付けてしまった。姫様の罪悪感が少しでも減るようにと、苦笑しながら付け加える。
       けれど何故か、姫様は困った顔になった。
      「え、や。……ううん、逆よ」
      「……逆?」
       言葉の意味が咄嗟に理解できず、訝しむ声が出た。
       姫様はそれに気を悪くした風もなく、真面目な顔で頷く。
      「テオにしか出来ない事が、たくさんあると思う」
      「……え」
       自分で提案しておきながら、オレは呆然とした。
       想定とあまりにも違い過ぎる。
       姫様と共に薬草の世話をしていたので、ある程度の知識はある。独学でも勉強していたので、薬草に関しては詳しいつもりだ。しかし、あくまで『一般人と比べて』という注釈がつく。
       医者や薬師といった本職には遠く及ばない。
       やる気はあるし努力は決して惜しまないが、現状では医療施設の戦力とは数えられないだろう。
       それなのに姫様は、オレにしか出来ない事があると言った。
       オレに『でも』出来るのではなく、オレに『しか』出来ないと。
      「併設する研究施設では、新薬の開発にも取り組む予定なの。世界中から色んな材料を取り寄せて、効果を試してみたりするんだけど、普通に混ぜるだけじゃ効果が出ない場合もあって、化学反応……ええっと、熱を加えたり、冷やしたりする事で有効な成分が抽出出来るものもあるのよ」
      「!」
       『熱を加える』と『冷やす』という言葉にオレは反応する。
      「ただ鍋を火にかけるって方法だと、かなり温度調整が難しいでしょう? 細かな温度管理は無理だと思うのよね。でも貴方なら」
       出来るよね? と言いたげな顔だ。
       寄せられる期待と優しい眼差しに泣きたい気持ちになりながら、オレは笑む。たぶん失敗して泣き笑いみたいになっているけど、構うものか。
      「……得意です」
       魔法の細かな調整について拘り、訓練を提案してくれたのは姫様だ。
       オレ達を兵器として扱うなら、火力はただ大きい方がいい。『制御』ならともかく、人殺しの能力に『調整』など不要。でも姫様は、温度や持続時間を重視した。
       何故だろうと思った事もある。
       でも答えは至極簡単だ。
       姫様にとってのオレ達は兵器ではなく、『竈』と『氷室』だから。
      「貴方の能力はとても重宝されるわ。……だからこそ良く考えて決めて。すぐに結果の出るお仕事ではないし、軌道に乗るまで、かなり苦労をかけてしまうと思う。それに成功しても、研究者との共同開発、もしくは助手のような扱いになるでしょう」
       私は貴方に、地位も名誉も約束してあげられない、と姫様は言う。
       眉間に寄った皺が、彼女の悔しさを代弁していた。
      「私が挑もうとしている事業は、私の代では完成しないわ。たぶん子供か孫の代になって、ようやく形になる。生きているうちには何も返せないかもしれないのに、簡単には貴方を巻き込めない」
       姫様は俯きかけていた顔を上げる。
      「だから、もしイリーネ様のように魔導師として大成したいと思っているなら、今の話は聞かなかった事にしてほしい」
       なんて馬鹿正直で、なんて格好良い女性だろう。
       こんなの惚れるなって方が無理だ。
       今すぐ立ち上がって、好きだと叫びたい気持ちをどうにか押し込める。
       嬉しいような、くすぐったいような。持て余す感情を誤魔化すように、少し意地悪な顔をして見せた。
      「オレが必要なら、騙してでも引き抜くべきでは?」
      「……それは、本当にそう。合理的な判断が出来ないのが、私の致命的な欠点だと思う」
       自分から言い出しておきながらと怒っていい場面なのに、姫様は難しい顔で反省し始める。
      「冗談ですよ。駆け引きが出来ない姫様だからこそ、オレも取り繕わずに話したんです。貴方はそのままで良い」
       姫様は少し照れたように、はにかむ。
       ああ、可愛い。
       とんでもない美少女なのに、どう見られるかなんて全く気にしていなくて、笑うとくしゃりとなるのが、めちゃくちゃ可愛い。
       たぶん近衛騎士団長も、この笑顔が好きだろうなと直感的に思った。
      「師匠を尊敬していますし、とても大事なお役目だとも思っています。……ですが許されるなら、オレは別の道を進みたい」
       このまま正式に国家所属の魔導師となり、有事の際の戦力として一生を終える事が、単純に怖い。誰の役にも立てず、何も残せずに消えるのは恐ろしい。
       かといって、活躍の場である戦争を望むのはもっと嫌だ。
      「地位も名誉も、正直無縁だったのでピンときません。認められたら嬉しいなぁとは思いますが、でも、なくたって困りはしないんです。自分が死んでから百年くらい経って、書物の端っこに載るかも、なんて妄想しているくらいでオレには丁度良い」
       倉庫に仕舞った武器として終えるより、薬箱の中で忘れられた薬になりたい。
       いつか遠い未来で誰かの役に立つのかもと思えば、形にならないまま死んでも悔いは少ないと思った。
       それに姫様の傍ならきっと、そんな感傷に浸る暇もたぶん無い。
       目まぐるしい日々の中でオレは、自分らしく生きていける。そんな確信があった。
      「誰かの為に頑張る貴方の力になりたい。お願いします。どうか姫様の下で働かせてください」
      「テオ……」
       姫様の声が、感情の高ぶりを表すように少し掠れる。
       暫しの沈黙。何かを決意したように、姫様はきゅっと唇を引き結んだ。
      「分かった」
       しっかりと頷いた姫様に、体中の力が抜けそうになる。
       どうやらオレは、とんでもなく緊張していたらしい。
      「父様に交渉してみるわ。難航するかもしれないけれど、テオの能力と医療の研究との親和性の高さを切り口にして、計画案を纏めてからプレゼ……えっと提案してみるつもり」
       既にそこまで考えてくれている事に驚く。
       その場凌ぎの言葉とは思っていなかったけれど、すぐに話が進むとも予想していなかった。
       本当に、この方は、どれだけオレを惚れ直させれば気が済むんだろう。
       もう失恋が決まっているというのに、酷い話だ。でも、嫌な気持ちではない。むしろ清々しささえ感じた。
      「それで、テオ。もしかしてなんだけど、イリーネ様には既に話していたりする?」
       ルッツと別行動している件で少し話したのを覚えていたらしい。
       師匠への用事は正にこの話だったので、オレは是と返した。
      「姫様に了承を得てからとも思いましたが早い方がいいかと思って。師匠に相談したら、好感触でした」
      「それは有難いわ。イリーネ様を味方に付けられたら交渉もやりやすくなるわね」
       姫様は悪戯を企む子供みたいな顔で口角を上げる。
       くるくると変わる表情をこの先も見守れるのかと思うと、幸せだと改めて感じた。
       姫様の婚約の話を聞いて、もちろん胸は痛む。
       でもオレは、姫様の幸せを壊したくない。それに無理やり、気持ちを消そうとも思っていない。
       いつか自然と敬愛や親愛へと変化するかもしれないし、一生変わらない可能性もある。
       それならオレは、あるがままにしておきたい。
       一生好きなら、その気持ちを抱えたまま生きて、いつか死にたい。
       何も求めないから、どうかそれだけは許してほしい。
      「姫様」
       呼びかけると姫様の視線がオレの方を向く。
       なに? と先を促すように首を傾げる姫様に、心の中で告白した。
      『好きです』と。
      「……テオ?」
      「書類を作成する前に、オレにも声を掛けてくださいね。及ばずながら手伝いますので」
      「もちろん。頼りにしているわ」
       姫様の笑顔を見つめながら思う。
       うん。やっぱり幸せだ。


      IP属地:上海3楼2021-12-31 22:15
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        259
        転生王女の心配。
         テオの笑顔を眺めながら、頭の中で予定を組み立てる。
         テオと話を詰めながら草案を練るにしても、とにかく時間が足りない。勉強の合間を縫ってとなると、時間もまちまちになるし、テオと予定が合うとも限らないしなぁ。
         それに短時間では話がちゃんと纏まるとも思えない。
         そして、そんな突貫工事で仕上げたプレゼンで父様が納得するとは、もっと思えない。
         『出直してこい』と鼻で嗤われる図が、容易く頭に思い描ける。
         馬鹿めと言わんばかりの顔で、ぺいっと書類を突っ返されるところまで想像した。
         ……はっ、いかん、いかん。
         ただの妄想なのに物凄く腹が立ってきた。限りなく正解に近い想像でも、現実ではない、まだ。
         私のプレゼンの出来次第だ。
        「……よし」
         ぐっと拳を握り締める。
         時間がないなら作るしかない。
         まずは勉強の方を精力的に片付けよう。前倒しにするレベルで頑張れば、纏まった時間が確保出来る。
         それから医療の研究に携わる予定の、クーア族のお爺ちゃん達にも相談してみよう。実験用具とかには詳しくないから、仕組みを知りたい。専門家の方を紹介してもらう必要も……待てよ。ユリウス様なら伝手があるんじゃない?
         考えているうちに、ワクワクしてきた。
         忙しくても、目標が明確なら頑張れる気がする。
        「テオ、一緒に頑張ろうね」
        「はい」
         そんな会話をしている時、休憩室の扉が少々乱暴に開いた。
         音に驚いて、私とテオは同時にそちらを向く。すると、走ってきたのか、肩で息をするルッツが戸口に立っていた。
         額に汗が浮かんでいるのに、顔色は酷く悪い。
         蒼褪めたルッツは、私とテオを交互に見た。
        「……ルッツ?」
         どうかしたのかと問う意味を込めて呼ぶと、ルッツは私の視線から逃れるように顔を背ける。そして何故か、鋭い目でテオを睨み付けた。
        「さっき師匠に会って、話を聞いた。……こないだ言ってたアレ、本気だったの?」
         責めるような強い口調だった。
         喧嘩腰ですらあるルッツの態度を気にした風もなく、テオは冷静な声で「ああ」と短く返す。
        「本気だ。今、姫様にもお話ししたところだ」
        「っ! テオ、お前……っ」
         息を呑んだルッツは荒い足音を立てながらテオに近付き、胸倉を掴む。
         テオが座っていた椅子が足に引っかかって倒れ、派手な音が室内に響く。即座に部屋に踏み込んできたクラウスを、私は手で制した。
         大丈夫、と告げながらも、私自身が大丈夫でなかった。
         正直理解が追い付かない。でも今、本音でぶつかっているらしい二人の間に割って入り、話を止めてしまうのは駄目な気がする。
         テオは胸倉を掴む手を振り払う事もせず、ルッツと向かい合う。
        「そんなガキの夢みたいな話が、本当に実現すると思ってんの? 地属性の魔導師ならともかく、オレらの能力でどうやって人の役に立つ気?」
        「ルッツ」
        「そんな事を相談しても、姫を困らせるだけだろ。ただでさえ忙しそうなのに、無意味な事でこれ以上……」
        「ルッツ!」
         捲し立てるルッツを遮るようにテオは呼び、真っ直ぐに目を見つめた。
        「姫様は了承してくださった」
        「……は?」
         一拍置いて、ルッツは呆けた声を洩らす。
        「……実のところオレも、迷惑をかけるだけだと思っていた。でも姫様はオレの話を聞いて、オレにしか出来ない事があると言ってくれた」
        「そ、そんなわけ……」
         決然と話すテオに対し、ルッツは迷子のように頼りなく視線を彷徨わせる。
         信じられないのか、信じたくないのか。動揺するルッツを見て、私は心が痛くなった。
         ルッツとテオはずっと一緒に生きてきた。同じ養護院育ちで職場が一緒だからとか、そういう腐れ縁的な意味合いだけでなく、もっと深い場所で繋がっている。
         魔力持ちという特異な体質で迫害されてきた過去も、スケルツの企みによって誘拐されかかった時も、力を合わせて乗り越えてきた。
         兄弟であり親友、そして切磋琢磨出来るライバル。
         二人には、相棒という言葉だけで表せない絆がある。
         けれど今、二人は分岐点に立っていた。
         そして選択によっては、別々の道を進む事になる。
         今まで当たり前に傍にいた人がいなくなる。それはどんなに心細く、寂しい事か。私には想像もつかない。
        「医療施設に併設される研究所で、オレの能力を活かせる可能性がある。……殺す為でなく、生かす為に力を使えるかもしれないんだ」
         そう言ったテオは、胸元を掴んだままだったルッツの手を外す。もう殆ど力は入っていなかったのか、あっさりと離れた。
         途方に暮れたような顔をしたルッツに、テオは困ったように眉を下げる。
        「……もっとちゃんと本気だって事、示せば良かったよな。オレも叶うなんて思えなかったから、お前にも胸を張って話せなかった。ごめん」
         テオが頭を下げると、ルッツの肩がびくりと跳ねる。
        「でも今日、オレ自身が信じていなかったオレの可能性を、姫様が信じてくださった。だから金輪際、うだうだ悩むのは止める」
        「テオ……」
         テオの真剣な顔をぼんやりと見つめていたルッツの眉間に、ぎゅっと皺が寄る。
         泣きだす直前の子供みたいな顔を隠すみたいに、ルッツは俯いた。
        「……そうやって、お前も離れてくんだ」
        「ルッツ……」
        「姫もテオもいなくなって、いつまでもガキなままのオレだけ取り残される」
        「ルッツ! それは」
         違う、と思わず声を上げる。割って入るべきじゃないと見守っていたけれど、あまりにも切ない呟きに黙っていられなくなった。
        「テオも私も、貴方から離れたいんじゃない。ただ貴方の未来を勝手に決めたくないだけ」
         テオと同じくルッツも協力してくれるなら、どれだけ頼もしい事か。
         魔導師としての能力への期待もあるけど、それだけじゃなくて。幼い頃から傍にいてくれた友人が助けてくれるなら、とても心強い。
         でもそれを口に出したら、ルッツの未来を私が決めてしまう事になる。直接ではないにしろ、誘導して彼の選択を狭める。
         それが嫌だからテオも、一人で私に交渉しに来たんだろう。
         きっとテオだって、ルッツと離れたくはない。
         私だって、三人で他愛のない話をする時間がとても好きだ。
         それをどう言葉に表せば伝わるんだろう。
         自分で決めてほしいとか、貴方の為だとか。言葉にしようとすると途端に薄っぺらくなってしまって、ちゃんと届く気がしない。
         そうやって悩んでいる間に、ルッツは心を閉ざしてしまう。
        「もういい。放っておいて」
        「ルッツ!」
         ルッツは逃げるように背を向けて、休憩室を後にした。
         反射的に立ち上がると、テオの視線に背中を押される。
        「たぶん温室の隅っこの木陰にいます。アイツ、落ち込むといつもそこで蹲ってるから」
        「……私が行ってもいいの?」
         兄弟同然のテオの方が話しやすいのでは、という意味を込めて聞いた。
         するとテオは頷く。
        「行ってやってください」
         弟を心配するお兄ちゃんの顔で、テオは笑った。


        IP属地:上海4楼2021-12-31 22:20
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          260
          氷魔導師の決意。
          ※氷属性の魔導師、ルッツ・アイレンベルク視点となります。
           温室の隅。
           背の高い木の裏側で、オレは膝を抱えて項垂れた。
          「……さいあく」
           力なく呟いた言葉はもちろん、相棒に向けたものではない。
           癇癪を起こして当たり散らし、更に逃げてきた自分に対してだ。
           何も悪くないテオに心無い言葉をぶつけ、しかも心配してくれた最愛の人の手を振り払って。オレはいったい、何がしたいのか。
           膝にごつりと己の頭をぶつけて、髪を掻き毟る。
           恥ずかしくて、情けなくて、消えてしまいたかった。
          「かっこわる……」
           こんなつもりではなかった。
           もっと冷静に、ちゃんと話し合う気だった。
           でも、キラキラと目を輝かせて未来へと進んでいく二人を見たら、気持ちが抑えきれなかった。
           変化を畏れたオレが立ち止まっている間に、二人がどんどん先へ行ってしまう。
           三人で一緒にいられる今を惜しんでいるのがオレ一人みたいで、勝手に置いてきぼりにされたような孤独を感じた。
           どうにか引き留められないかなんて、一瞬でも考えた自分に吐き気がする。
          「……っ」
           せり上がってきた吐き気を無理やり飲み下し、目を閉じて息を細く逃がす。
           針山みたいな感情をどうにか宥めようと呼吸を繰り返していると、背後から小さな音がした。石材の床に落ちた砂粒を、靴底が踏み締める音だ。
           テオだろう。
           オレが落ち込むとここに逃げ込むのを知っているテオは、少し頭が冷えた頃を見計らって迎えに来る。
           面倒見の良い、出来た男だ。
           オレと違って、と胸中で付け加えて、勝手に落ち込む。
           小さな足音はゆっくり近づいてきて、オレの背後で立ち止まる。
           木を挟んで反対側。花壇の縁のレンガに腰を下ろしたのだろうと、衣擦れの音で察した。
           けれど特に言葉をかけられる事もなく、穏やかな沈黙が流れた。
           空気の入れ換えの為に細く開いた窓から、微風が流れ込む。聞こえてくるのは、心地良い葉擦れと鳥の囀りだけ。
           ささくれ立つオレの心の棘がぽろぽろと抜け落ちる。
           深呼吸をすると、肩の力が自然と抜けた。
           責めるのではなく、宥めるのでもなく。
           ただ黙って待ってくれる友がいる事の幸福を、噛み締めた。
           思い返せば、ずっとそうだった。
           小さい頃のオレは今よりも更にガキで、世界で一番不幸なのは自分だと思っていた。傷付けられまいと虚勢を張って、周りに牙を剥いて。
           ツンケンするオレに根気強く話しかけてくれたのは、テオと姫だけだった。
           今思うと恥ずかしくて転げまわりたくなるくらい、あの頃のオレは感じが悪かった。よく見捨てずに付き合ってくれたものだと思う。
           二人はオレと違って、人間が出来ているから許してくれたけれど、それに甘えてはいけない。許されるから何をしてもいいと勘違いした時点で、その関係は破綻する。
          「……テオ、ごめん」
           吐き出した声が、情けなく掠れた。


          IP属地:上海5楼2021-12-31 22:41
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            「取り乱して、お前にも姫にも酷い事いっぱい言った。あれは本気じゃない……は卑怯だな。言ったのは撤回出来ないから、忘れてなんて都合の良い事は言わない。でもあんなの、癇癪起こしたガキが足引っ張る為に言った戯言だから、まともに取り合わないで」
             早口で捲し立ててから、自分が凄く恥ずかしくなって、誤魔化すように前髪をぐしゃりと掻き混ぜる。
            「……本当は、お前が正しいって分かってる」
             返事を聞くのが怖くて、そのまま言葉を続ける。
            「魔導師として敷かれた道を当然のように進むんじゃなくて、自分の頭で考えて進路を決めたお前は凄い。それに応えて、能力を活かす方法を一緒に考えてくれる姫も、めちゃくちゃ立派だ」
             元々、テオは穏やかな気質だ。
             魔力持ちという特殊な生まれの為に魔導師を目指していたけれど、選べるならば別の生き方をしていたんだろうなと思う。
             だから医療に関わる仕事がしたいという話を聞いた時、感情とは裏腹に頭では納得していた。
            「医療に貢献する仕事は、魔導師よりお前に向いてると思う」
             言い訳をさせてもらえるなら、『今』でなければ、もうちょっとだけマシな反応が出来たはずだ。
             姫の婚約が決まって、致命傷を負っていた今でなければ、たぶん。
            「……分かってたのに、八つ当たりした。姫の婚約に動揺していて、受け止め切れなかったってのは、ただの言い訳だね」
             はは、と零した笑いは酷く乾いていて、強がりが空回ったみたいになった。
             本当に恰好悪いなと、溜息が洩れる。立てた膝の上で組んだ手に額を押し付けた。
            「オレにとって姫の存在って物凄く大きいから、いなくなるのが滅茶苦茶怖い」
            「……」
             息を呑むような、小さな音がした。
             けれど何も言わないから、それを免罪符にして弱音を垂れ流す。
            「だってオレ、姫に会う前って半分死んでたようなものだった。楽しいとか嬉しいとか、そういうのも知らなかったし、なんだったら呼吸の仕方さえ姫に教わった気がする」
             年下の女の子が手を引いて、明るいところまで引っ張り上げてくれた。
             そこでようやく息が出来て、オレの人生は始まったんだと思う。
            「そんな人が離れていくって聞いて、取り繕えないくらい動揺した。足元の床が崩れ落ちたみたい……ううん、足りないな。……明日から太陽は昇らなくなりますって言われたみたいな、衝撃と根源的な恐怖があって、自分がどう息をしていたのかも分からなくなりかけた」
             世界一、大切な女の子。
             オレの光、オレの太陽。
             奪われたら、どうやって生きていけばいいのかすら分からない。
            「本当、しょうもない。……結局オレは、なんも出来ないガキのまま。手を引いてもらわなきゃ歩けないなんて、お前にも姫にも愛想を尽かされて当然だ」
             自分で自分に嫌気が差す。けれど自分を奮い立たせる気力さえ、今は足りない。
             ゆっくりと圧し潰してくる罪悪感と絶望に負けそうだ。
             重力に任せて、膝に頭を埋めたまま目を閉じようとした、その時。
             凛とした声が、静かに響いた。
            「そんな事ない」
            「……っ!?」
             予想外の声に、オレは目を見開く。
             背後に誰かいる気配はずっとあったけれど、テオだと信じ込んでいた。しかし聞こえてきたのは、世界一大切な女の子のもの。
             酷く混乱して、声も出ない。顔を上げたいのに凍り付いたみたいに、動けない。
             メチャクチャ情けない弱音を好きな子に聞かせていたとか、恥ずかしくて死ねる。今すぐ穴を掘って埋まって、そのまま人生をそこで終えたいくらいだ。
             全身から嫌な汗がぶわっと出てきた。
             顔はたぶん強張って、赤くなったり蒼くなったりと、酷い有り様になっている。
             今、姫に覗き込まれたらオレは死ぬ。寧ろ誰か殺してくれ。
             そんな切実且つ馬鹿馬鹿しい願いが通じたのか、姫はオレの前には回らなかった。
             木を挟んで背中合わせのまま、話しかけてくれた。
            「ルッツが何も出来ないなんて、そんな訳ないし、しょうもなくもない」
             あのクソくだらない愚痴を聞いていたにも関わらず、姫はオレを笑わない。
             静かな口調ながら、きっぱりと言い切る。
             その場凌ぎの慰めではなく、心の底からそう思ってくれていると伝わる、真っ直ぐで曇りない声だった。
            「まず、ルッツは頭が良い」
            「え……?」
            「分厚い専門書だってすぐに読み終わっちゃうし、しかも内容もきちんと理解しているの。記憶力も良いからずっと忘れないし」
            「ひめ?」
            「それに運動神経も良いのよ。魔導師なのに魔法なしで騎士と同等に渡り合えるし、体術なら勝てるってイリーネ様が仰っていたわ」
            「それは」
            「それに、とっても優しい。言葉にするのは苦手みたいだけど、私やテオの事を凄く大切にしてくれているの」
            「う、ぇ……」
             正に誉め殺しされ、どんな顔をしていいか分からない。
             間抜けな声が洩れたのを、気にする余裕もなかった。
            「魔力を持って生まれた事でたくさん苦労をしてきたのに、……私の我儘を聞いて、一緒にアイスクリームを作ってくれた」
             くだらないって、跳ね除けないでくれたの。そう言った姫の声が、僅かに閊える。
             恐る恐る振り返った先、小さな手が何かを堪えるみたいにぎゅっと強く握りしめられた。
            「私が貴方の手を引いてきたっていうけれど、私だって貴方とテオに支えられてきたの。そんな一方的な形じゃない。……私の大切な友達の事を、しょうもないなんて言わないで」
             辛そうな声に、胸が詰まる。
             オレのせいだと思うと、罪悪感を覚える。けれどそれ以上に嬉しい。オレの為に怒ってくれるのか。
            「姫……っ!」
             衝動的に立ち上がって、背後から細い体を抱き締めた。
            「っ!? る、」
             驚きに固まった体が、離れようとしているのか身動ぐ。
             それを留めるように、腕に力を込めた。
            「ごめん、すぐに離れるから。ちょっとだけこのままで……お願い」
             わざと姫が突き放せなくなる言葉を選んだ。
             こんな言い方は狡いと頭の隅で己を責めながらも、腕の中に収まる温もりに歓喜した。
             好き、好きだ。
             大好きすぎて、心臓が痛い。
             柔らかな温度と感触、花のような香りも、全て。一生覚えていようと思った。
            「……ルッツ?」
             戸惑いながらも、気遣うような、そんな声。
             優しさに付け込まれているのに、と心配しそうになって、オレが言っちゃ駄目かと苦笑する。
            「……色々とごめん。迷惑も心配も、たくさんかけた。でも見捨てないでくれて、ありがとう」
             ほんの数秒、けれど一生分の幸せな時間を噛み締めるみたいに、最後に少しだけ力を込めて。
             名残を振り切って、手を離した。
             ほっと安堵した様子の姫をちょっと恨めしく思いながらも、しょうがないかと息を吐く。
             姫が近衛騎士団長を一途に慕っているのを知っていたし、それでも好きでい続けたのはオレの勝手だ。
             振り返った姫に、笑いかける。
            「いじけてないで、オレも自分の将来について真剣に考えてみる。……で、行き詰ったら相談してもいい?」
            「! もちろん!」
             ぱっと姫は顔を輝かせる。
            「医療施設と研究所についても教えて。テオがどういう仕事をするとか、オレにも出来る事があるのかとか、そういうのも。全部聞いて、調べて、何がしたいかは最終的に自分で決める」
            「うん、うん。……良かった」
             嬉しそうに頷いてから、小さくぽつりと呟く。
             優しくて健気で、しかも可愛らしいとか最強だな。
             こんなのを独り占めするとか、許されざる大罪では? と一人勝ちした男前の顔を思い浮かべながら、こっそり呪う。足の小指を強打しろと念じるオレは、たぶん器が小さい。でもそれくらい許してほしい。
            「話、終わりました?」
             暫く経ってから近付いてきた相棒は、憑き物が落ちたようなオレの顔を見て、安心したように表情を緩める。
            「いつものふてぶてしい顔に戻って何よりだ」
            「煩いよ」
             わざとらしい嫌味に、憎まれ口を返す。そんなオレ達を、姫は楽しそうに笑いながら見ている。
             この時間がとても大切だけれど、永遠に留めるのは不可能。
             でも、努力次第では繋がりを保てる。それならオレがするべきは、膝を抱えて蹲っている事ではない。
             テオのように、姫の下で研究に携わるのもいい。
             もしくは師匠の後継となり、姫を助けられる権力を得るのもアリだ。
             オレの未来には可能性がある。
             オレが諦めて投げ出さない限り、無限大の可能性が。
             お茶の続きをしようと休憩室を目指す姫の後を、二人並んで歩く。
             隣のテオは、呆れたような目をオレに向けた。
            「ルーッツ。悪い顔してんぞー」
            「いや。別に無理やり、諦める必要ないんじゃね、と思ってさ」
             年の差って結構、でかいよね。
             男の方が平均寿命短いって聞くし。
            「姫って、おばあちゃんになっても可愛いと思わない?」
            「お前……」
             軽く目を瞠った後、テオは呆気にとられた声で呟く。
            「夢を見るのは勝手だよねって」
             悪巧みするガキみたいに笑うと、テオも口角を吊り上げる。
            「流石オレの相棒」
             おもむろに持ち上げられた拳に、己の拳をゴツリとぶつけた。


            IP属地:上海6楼2021-12-31 22:41
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              好久没更新了。我会一直等楼主翻译的


              IP属地:广东来自Android客户端7楼2022-01-01 17:00
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                一月快过了


                IP属地:广东来自Android客户端8楼2022-01-30 21:51
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