ようやく王都アルバンに俺とヴォルクが辿り着いたとき、そこには地獄が広がっていた。
先の街同様に、都市全体に黒いぶよぶよとしたものが覆い被さり、巨大な蜘蛛の化け物が闊歩している。
以前に来訪した際の、華やかな王都の栄華はそこにはなかった。
「オオオオオオ……」
「オオオオオオ……」
そして都市の中央部には、蜘蛛の化け物の親玉が鎮座していた。
黒い毛に覆われた巨大な蜘蛛。
その前面に、三つの大きな頭部がついている。
左はヒキガエルで右は猫の頭、そして中央には、王冠を被った耳の長い男の顔。
全ての顔が焦点の合わない真っ赤な瞳を宿している。
三つ首の飽食王……魔王バアル。
システムの頂点、この世界における史上最強のモンスター。
神の声の前で対峙したときは、まるで勝負にならなかった。
しかし、俺もまた、伝説級上位のアポカリプスへと進化したのだ。
今度は絶対に負けねえ。
残る神の声の〖スピリット・サーヴァント〗は、魔王に当たるバアルと、そしてアロとトレントが足止めに向かった魔獣王の二体だ。
神の声はバアルが最強の魔物だと口にしていた以上、バアルを倒してレベルを上げることができれば、魔獣王に敗れることはまずないだろう。
神の声とは本当に戦うことになるのかはわからねぇし、ぶつかったとしても、それはきっと通常の魔物相手の戦いとは全く違ったものになるだろう。
神の声はシステムを網羅しており、この世界に対して何かしらの形での強い権限を有している。
そういった意味では、これは俺が魔物相手に命懸けで挑む、最後の戦いということになるかもしれない。
『ヴォルクとマギアタイト爺は街の化け物共を頼む。俺はバアルをやる!』
「わかった」
高度を落とすと、ヴォルクは俺の背を蹴って跳び上がり、家屋の屋根の上へと着地した。
バアルへと接近する。
だが、奴は不気味な程に動かない。
距離こそあるし、バアルの視界にはまだ入っていない。
しかしさすがに気が付かれるかと思ったが、未だに俺に対して反応を見せなかった。
先手を取れる。
アポカリプスは伝説級上位の中でも攻撃方面の能力に長けている。
同じくパワータイプの饕餮相手にスキルの手数と素早さを活かして殴り勝てたくらいである。
先手を打って戦いの主導権さえ掴めば、多少格上であってもそのまま倒しきれるだけのステータスは揃っている。
史上最強の魔物だ。
どう考えたってぬるい相手ではない。
この機会を活かして一気にダメージを稼ぎ、有利な盤面を維持するため、相手の立て直しを許さず、そのままスキルの連打をお見舞いしてやる!
俺は〖次元爪〗をバアルの眷属共へとお見舞いし、続けてバアル本体へと放ってやった。
三つの頭の内、猫の頭が一瞬早く俺へと反応した。
だが、もう遅い。
次元を超える爪撃の前に、バアルの反応は出遅れていた。
バアルの身体に爪撃が走り、奴の巨躯が浮いた。
この好機を逃す手はない。
俺は一気に肉薄し、奴の身体へと尾の一撃をお見舞いしてやった。
アポカリプスの最高速度で、全体重を乗せた一撃だ。
バアルは崩れた体勢のまま、前足で尾の攻撃を受け止める。
衝撃で王都全体が揺らぐ。
そのままバアルを弾き飛ばしてやった。
こんなもんじゃ終わらせねえ。
このまま終わらせるつもりでやる!
「オゲェェエエエエッ!」
すかさず〖次元爪〗を放つために腕を背後へ引いたが、その瞬間、左のヒキガエルが大口を開いた。
奴の口から真っ直ぐ舌が伸びてくる。
とんでもねぇ速度だった。
払い除けるために爪で引き裂こうとしたが、舌は器用に俺の爪を避け、俺の右前脚へと絡み付いた。
「グゥ……!」
バアルの中央、冠の男の顔が、頭を振りながら口先を尖らせて何かを吐き出した。
細い糸だったが、当たれば無事で済まないであろうことを、俺は直感的に理解した。
だが、右前脚が舌に引かれている現状、大きく動くことはできない。
俺は地面に伏せて、辛うじて糸を回避した。
尻目に、巨大な建物がバアルの糸に切断されて崩れ落ちるのが目に見えた。
あれは……〖断糸〗のスキルか!
アトラナートも有していたスキルだ。
発動速度も糸自体も速く、小さな動作で出せて、その上に威力が高い。
気を抜けば身体の部位を容易く奪われることになる。
避けられてよかったと安堵した束の間、強い殺気と悪寒を覚え、俺は左の前脚を大きく上げて身体を庇った。
鋭い斬撃……いや、これは爪撃!
ドラゴンの体表が容易く裂かれ、前脚の骨がへし折られるのを感じた。
とんでもねえ威力だ。
先の街同様に、都市全体に黒いぶよぶよとしたものが覆い被さり、巨大な蜘蛛の化け物が闊歩している。
以前に来訪した際の、華やかな王都の栄華はそこにはなかった。
「オオオオオオ……」
「オオオオオオ……」
そして都市の中央部には、蜘蛛の化け物の親玉が鎮座していた。
黒い毛に覆われた巨大な蜘蛛。
その前面に、三つの大きな頭部がついている。
左はヒキガエルで右は猫の頭、そして中央には、王冠を被った耳の長い男の顔。
全ての顔が焦点の合わない真っ赤な瞳を宿している。
三つ首の飽食王……魔王バアル。
システムの頂点、この世界における史上最強のモンスター。
神の声の前で対峙したときは、まるで勝負にならなかった。
しかし、俺もまた、伝説級上位のアポカリプスへと進化したのだ。
今度は絶対に負けねえ。
残る神の声の〖スピリット・サーヴァント〗は、魔王に当たるバアルと、そしてアロとトレントが足止めに向かった魔獣王の二体だ。
神の声はバアルが最強の魔物だと口にしていた以上、バアルを倒してレベルを上げることができれば、魔獣王に敗れることはまずないだろう。
神の声とは本当に戦うことになるのかはわからねぇし、ぶつかったとしても、それはきっと通常の魔物相手の戦いとは全く違ったものになるだろう。
神の声はシステムを網羅しており、この世界に対して何かしらの形での強い権限を有している。
そういった意味では、これは俺が魔物相手に命懸けで挑む、最後の戦いということになるかもしれない。
『ヴォルクとマギアタイト爺は街の化け物共を頼む。俺はバアルをやる!』
「わかった」
高度を落とすと、ヴォルクは俺の背を蹴って跳び上がり、家屋の屋根の上へと着地した。
バアルへと接近する。
だが、奴は不気味な程に動かない。
距離こそあるし、バアルの視界にはまだ入っていない。
しかしさすがに気が付かれるかと思ったが、未だに俺に対して反応を見せなかった。
先手を取れる。
アポカリプスは伝説級上位の中でも攻撃方面の能力に長けている。
同じくパワータイプの饕餮相手にスキルの手数と素早さを活かして殴り勝てたくらいである。
先手を打って戦いの主導権さえ掴めば、多少格上であってもそのまま倒しきれるだけのステータスは揃っている。
史上最強の魔物だ。
どう考えたってぬるい相手ではない。
この機会を活かして一気にダメージを稼ぎ、有利な盤面を維持するため、相手の立て直しを許さず、そのままスキルの連打をお見舞いしてやる!
俺は〖次元爪〗をバアルの眷属共へとお見舞いし、続けてバアル本体へと放ってやった。
三つの頭の内、猫の頭が一瞬早く俺へと反応した。
だが、もう遅い。
次元を超える爪撃の前に、バアルの反応は出遅れていた。
バアルの身体に爪撃が走り、奴の巨躯が浮いた。
この好機を逃す手はない。
俺は一気に肉薄し、奴の身体へと尾の一撃をお見舞いしてやった。
アポカリプスの最高速度で、全体重を乗せた一撃だ。
バアルは崩れた体勢のまま、前足で尾の攻撃を受け止める。
衝撃で王都全体が揺らぐ。
そのままバアルを弾き飛ばしてやった。
こんなもんじゃ終わらせねえ。
このまま終わらせるつもりでやる!
「オゲェェエエエエッ!」
すかさず〖次元爪〗を放つために腕を背後へ引いたが、その瞬間、左のヒキガエルが大口を開いた。
奴の口から真っ直ぐ舌が伸びてくる。
とんでもねぇ速度だった。
払い除けるために爪で引き裂こうとしたが、舌は器用に俺の爪を避け、俺の右前脚へと絡み付いた。
「グゥ……!」
バアルの中央、冠の男の顔が、頭を振りながら口先を尖らせて何かを吐き出した。
細い糸だったが、当たれば無事で済まないであろうことを、俺は直感的に理解した。
だが、右前脚が舌に引かれている現状、大きく動くことはできない。
俺は地面に伏せて、辛うじて糸を回避した。
尻目に、巨大な建物がバアルの糸に切断されて崩れ落ちるのが目に見えた。
あれは……〖断糸〗のスキルか!
アトラナートも有していたスキルだ。
発動速度も糸自体も速く、小さな動作で出せて、その上に威力が高い。
気を抜けば身体の部位を容易く奪われることになる。
避けられてよかったと安堵した束の間、強い殺気と悪寒を覚え、俺は左の前脚を大きく上げて身体を庇った。
鋭い斬撃……いや、これは爪撃!
ドラゴンの体表が容易く裂かれ、前脚の骨がへし折られるのを感じた。
とんでもねえ威力だ。